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(Inertial measurement unit)/シュードライトDGPS(Differential GPS)複合航法、IMU/MLS(Microwave landing system)/電波高度計複合航法を行い、オーストラリア・ウーメラにおける飛行実験でその性能を実証した。ALFLEXの開発日程を図3.3.2.1−3に示す。
図3.3.2.1−4はALFLEX実験機の三面図、図3..3.2.1−5は透視図である。機体は前長約6mで、HOPEの37%スケールモデルである。機体には、DGPS受信機、IMU,MLS受信機、電波高度計などの航法センサのほか、航法・誘導・制御演算を行う搭載計算機が装備されている。搭載計算機では図3.3.2.1−6に示すようなロジックを実行している。航法の特徴は、多数のセンサを組み合わせてより性能の高い航法システムを得る複合航法で、実時間処理によるカルマンフィルタで各センサ情報を融合している。航法・誘導・制御系のハードウェア構成を地上装置も含めて図3.3.2.1−7に示す。図中、濃い部分はALFLEX実験機の航法・誘導・制御系を構成するコンポーネントで、薄い部分は評価、支援のためのコンポーネントである。
ALFLEX実験機は高度1,500mまでヘリコプターでつり上げ、そこで分離されて自由飛行に移り、約3,000m滑空して自動着陸する。基準軌道を図3,3.2.1−8に示す。実験はオーストラリア南部の砂漢地帯ウーメラ(図3.3.2.1−9)で2ヶ月にわたり実施された。滑走路の周りには図3.3.2.1−10〜12に示す。シュードライト型DGPS地上局、MLS地上局、評価基準経路生成のためのレーザトラッカ/トラッキングレーダが設置された。
ALFLEX航法・誘導・制御系に対する要求は、タッチダウン時の位置、速度、姿勢角に関して図3.3.2.1−13に示す値が設定されている。これらはおもに滑走路の大きさ、機体の強度などから決められている。図3.3.2.1−14に13回の着陸実験のタッチダウン位置、速度に関する結果を示す。図より、すべての実験ケースで要求を満足し、航法・誘導・制御系が設計通りに機能していたことが分かる。接地位置に関してはX軸側にかなりずれているが、これは地面効果を安全側に見積もっていたためと考えられる。
ALFLEXの航法系は、無人の自動着陸にGPSを含む複合航法を本格的に応用した世界最初の例である。実験では飛行フェーズに応じて、IMU/DGPS,IMU/MLS/電波高度計複合航法を図3.3.2.1−15に示すように切り替えて実施した。これは航法に対する要求精度に応じて切り替えており、それぞれフェーズにおける要求精度は図3.3.2.1−16に示す値である。要求精度の厳しい滑空部分ではMLSにより、DGPSは用いなかった。DGPSを滑空部分で用いなかった理由はALFLEX航法系の開発が開始された当時、シュードライト型DGPSの高度利用アルゴリズムに対する信頼性がまだ十分ではなかったためである。しかし当時からDGPSの可能性は十分認識しており、滑空フェーズにおいてもバックアップ系として航法処理は継続して実施していた。その結果、図3.3.2.1−16に示すよう、IMU/DGPS複合航法は要求精度を大きく上回る性能を示しており、ほぼMLS複合航法と同精度であった。図3.3.2.1−17に各軸誤差の詳細を示すが、最大誤差が高度方向で5m、水平面内では1〜3m程度であった。この結果を受けて、2000年打ち上げ予定のHOPE−Xでは、lMU/DGPS複合航法を全着陸フェーズの主航法センサとして用いることが決まっている。MLSはバックアップ系とするか、もしくは搭載しないことも検討されている。

 

 

 

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